トーキング出席者(順不同)
猪俣 雄也 (40回生) 熊本県立大総合管理学部一年
内川 陽生 (40回生) 熊本県立大総合管理学部一年
緒方 愛 (40回生) 熊本大学教育学部一年
田尻 奈菜 (40回生) 熊本県立大総合管理学部一年
司会 吉原 沙織 (18回生) りんどう会理事広報委員
吉原さん
猪俣さん
田尻さん 緒方さん
内川さん

 今、高校生を中心に若い世代の間でベストセラーとなっている小説・片山恭一著『世界の中心で、愛をさけぶ』。その物語にオリジナル・ストーリーを付け加え、若手監督のホープとして脚光を浴びている行定勲監督が映画化、記録的な観客動員数をあげた。
そこで、今春二高を卒業した4人と、りんどう会広報委員の吉原さんに映画を観てもらい、若者の恋愛感や行定監督の愛の描き方など、あれこれと感想を語り合ってもらった。

心のケアができる先生に
吉原  今回、同窓生の中でいちばん若い4人の皆さんと一緒に映画を見ました。猪俣・内川・田尻さんが県立大の総合管理学部、そして緒方さんが熊大教育学部の学生ということですが、本題に入る前に教えてほしいのだけど、総合管理学って何を学ぶ学部なの。
猪俣  10年前にできた学部です。行政と企業のいいところをそれぞれ学び、例えば行政職に就いたら企業のいいところを伝えて行政に尽くしていこうという学部です。
内川 反対に企業に就職したら、行政のいいところをその企業で活かすということです。
吉原 行政・企要それぞれのよい面を学んで、それぞれに活かして行うと言う訳ですね。実社会に出たらコーディネ一夕ー的な役割をする職種になるのかな。
田尻 まあ、そうですね。
吉原 緒方さんの場合は将来は、やはり学校の先生になるの。
緒方 私は養護教諭を目指しています。
吉原 私は、マスコミなどでの情報しか知らないけれど「養護の先生って大変だなぁ」という感じがしているけど…。
緒方 そうですね、少しでも子供たちの心のケアまでできるような先生になれたらと思っています。

情景描写がとてもきれい
吉原  さて、きょうは映画を観ていろんなことに思いを巡らしたけれども、みんなはどうだった。女性の立場からすれば主人公の朔太郎(大沢たかお/森山未来)は、まだ高校時代に起きたアキ(長澤まさみ)の死という現実をなかなか受け入れられず、そのことから逃れられずにいるようで、何か哀しいというか、私はそんな感じを受けたけれども、男性から見た主人公はどうですか。
内川 純粋で格好いいと思う。しかし、主人公のようには多分なれないけど(笑い)。
田尻 確かに女性から見れば朔太郎は哀しいですね。特に律子(柴咲コウ)の立場からすればまだ自分を120%受け入れてもらっていないですよね。
吉原 私は律子は素敵だと思った。カセットテープを届けに行く途中で交通事故に遭って足が不自由になるけれども誰も恨んだりしていないよね。
猪俣 僕はシリアスな場面展開があっても、海やブランコなどの情景描写がとてもきれいだったことから、少しほっとできた。
緒方 私も現在と過去という歳月を隔てて出てきたブランコのシーンが印象に残っています。

テ−プとメールの違いに・・・
内川  朔太郎とアキとが生きた高校時代の1986年は、今とは違い携帯電話とかメールがなかったので、お互いがカセットテープに自分の思いを吹き込んで交換するというやり方が新鮮に思えた。また、その方法は多分アキが自分の死を予期していて、テープに自分を残そうとしていたのではないかと思った。
吉原 そうだよね。今はみんなメールだよね。でもテープであれば、ため息とかバックにいろんな場面の音が入っていたりしてより気持ちがストレートに伝わるよね。ラジオの深夜放送も何か懐かしかったけど、今みんな聴いているの。
猪俣 中学生の頃、受験勉強をしながら聴いていました(笑い)。
田尻 物語の展開を、例えば祭の場面や朔太郎が病院の廊下を走る緊迫したシーンとを際立たせて描写していることが印象に残っているし、よかったと思う。
緒方 私は小説を先に読んでいたのでストーリーは分かっていたのですが、映画には小説の展開とは違う描写があってよかった。原作では回想シーンが中心なので、映画のように過去(86年)に遡った物語の展開がない。台風で欠航になった空港で朔太郎が必死で訴えるシーンは本当にジーンときて、アキを思う気持ちが伝わってきました。
田尻 アキを演じた長澤まさみさんが「泣ける映画ではなく泣きたくなる映画」ということをテレビで話していたけれど、その通りでした。私はアキが乗った父親の車を朔太郎が追いかけるシーンからずっと泣いていました。(笑い)
内川 僕は写真館の重爺(山崎努)という存在もよく描かれていたと思う。

ニ高時代、恋愛経験あり!?
吉原  存在感がある人物設定だね。次に、皆さんは高校時代のいちばんの思い出ってどんなものがあるの。
田尻 泣きたくなるような思い出はなかった…。思い出がある人がうらやましい。
吉原 それじゃ、受験勉強ばかりしていたの。
猪俣 そんなに勉強ばかりしてはいなかったと思うけど(全員うなずく)。僕はけっこう部活が忙しかった…。二高に入学したと思ったら「あっ!」という間に卒業してしまった。
内川 気がついたら3年生だった(笑い)。土・日がなかったよね。
吉原 みんな、けっこう忙しかったんだね。私の二高時代の頃はまだゆっくりノンビリしていて、とにかく本や漫画を読みあさっていた記憶がありますね。ところで、肝心の恋愛経験の方はどうなのかなあ…。
緒方 みんなあるよね。多少にかかわらず…(笑い)。
(全員が小声で「ある」とうなずき、にっこり笑う)
吉原 具体的に話してほしいんだけれどもー。(全員、沈黙する…) それでは、残念ながらその件は次号に回して、時間も迫ってきたので、最後に皆さんの先輩でもある行定監督へのメッセージをお願いします。

行定監督へのメッセージ
猪俣  一般的に、二高生には自信満々″という人がいないように思う(笑い)。
行定監督は二高時代どんな高校生だったのだろうか。当時から既に「映画監督になってやる」という強い自信を持っていたのかな。
内川 いや、二高生はみな夢は人一倍持っていると思うよ。
行定監督には映画撮影の舞台裏や公に出せないエピソードなど聞いてみたい。
緒方 私は逆に行定監督に二高時代の記憶や思い出を聞いてみたいです。
田尻 そうよね。映画作りのヒントになるような恋愛経験が二高時代にあったのか、ぜひ聞いてみたい。
吉原 毎日、仕事や日々の雑事に追われていると、いつの間にか泣くことも、笑うことも忘れてしまっている自分に気づくことがあるんです。自分の本当の気持ちにず〜っと嘘をついてきてるんですね。だから、映画『世界の中心で、愛をさけぶ』は感動することの大切さを再認識させてくれるメッセージをもらったような気がしています。
きょうは、みんなありがとう。

映画『世界の中心で、愛をさけぶ』ストーリー
 1986年、朔太郎とアキはともに高校2年生。容姿端麗で勉強もスポーツも万能なアキ。
朔太郎がそんな彼女をスクーターに乗せたことで交際が始まる。ところがアキが白血病で倒れ、死の恐怖に屈することなく懸命に生きようとするアキと朔太郎の新たな葛藤が始まる。そして、朔太郎とアキのテープによる「交換日記」を届ける役の小学生(当時)だった律子の運命も翻弄されていく…。物語は、かつてアキと死別した朔太郎の回想シーンを交錯させながら、婚約者・律子との新たな愛の展開も絡めていく。

行定勲監督プロフィール
 岩井俊二監督の『Love Letter』などで助監督を務め、2001年の『GO』で各映画賞を総なめにし、現在、日本映画界で最も注目されている映画監督の一人。今年3月には『きょうのできごと』が公開され、そして現在、吉永小百合主演の『北の零年』を撮影中。